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魔性の酒“アブサン”に魅入られた芸術家たち

美しい緑色をした魔性の酒、『アブサン』をご存知だろうか。この酒に魅せられ、取り憑かれ、身を滅ぼしたと言われている芸術家たちがいる。

魔性の酒『アブサン』

アブサンとは

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アブサンはニガヨモギを主に、アニスやミント、セイヨウヤマハッカやウイキョウなどを使用して作られる薬草系のリキュールである。蒸留酒の為アルコール度数は40%〜90%と高アルコール濃度のものが多い。特徴的な透き通った美しい緑色をしており、緑の詩神、緑の妖精等と呼ばれることもある。

かつてフランスで大流行したためフランスの酒というイメージがあるが、発祥の地はスイスである。ヴァル・ド・トラヴェールのある町のエンリオ姉妹が、この町で作られていた霊薬(錬金術におけるいわゆるエリキシルだと思われる)の処方をフランス人医師のオルディネールに売り、オルディネール医師はその処方に手を加えた上蒸留し、そのオルディネール医師のレシピをアンリ・ルイ・ペルノーが買い取り1790年代後半に商品化した。

大流行、そして禁止

アブサンか売り出された18世紀末から19世紀初頭にかけて、ワインより安く供給されていた為特にフランスにおいて大流行、一時は食前酒のシェア90%をアブサンが占めていたともいわれる。
そのアルコール度数の高さによるアルコール中毒、アブサンの主成分であるニガヨモギに含まれる成分、ツヨンが脳の神経系に異常を及ぼし、麻痺、痙攣、幻覚、昏睡や自殺衝動を引き起こすこと(いわゆるアブサン中毒の症状)が問題視され20世紀初頭にはスイス、フランス、ドイツやアメリカでも製造、販売が禁止された。当時アブサンに含まれるニガヨモギ=ツヨンの量が規制されていなかったこともあるがアブサン中に含まれるツヨンの量を調整したり分析する技術がまだなかったことも多くのアブサン中毒を引き起こす遠因ともなった。

『アブサン』に魅入られた芸術家たち

トゥールーズ・ロートレック

同時代の画家、モローに「ロートレックの絵はすべてアブサンで描かれている」と言わしめたほどのアブサン愛好家、中毒であった。酒場で友人とアブサンを飲んでいるロートレックの写真も存在する。
ロートレック自身、アブサンの「緑色は悪魔の誘惑の色」と語っていたとか。まさにアブサンの緑の悪魔に魅入られて身を滅ぼしたロートレック。彼の絵には、アブサンが描かれたものも複数存在する。

フィンセント・ファン・ゴッホ

ファン・ゴッホといえば有名な「耳切り事件」
。この事件を引き起こしたきっかけとしてゴッホがアブサン中毒であったという説がある。もっともゴッホについては100以上の色々な病因説が語られており現在ではアブサン中毒が直接の「耳切り事件」の原因ではないとする意見も多い。
ただ生前、アブサンを浴びるように飲んでいたことは確かなようであり、彼もまたアブサンに溺れてしまった芸術家の一人と言えるだろう。

アメディオ・モディリアーニ

エコール・ド・パリの代表とも言えるモディリアーニは他と一線を画した個性的な画風が魅力であるが、生前、彼の絵は評価されることはなく生活は困窮していた。肺結核を患っていたモディリアーニは、咳を抑えるためでもあったというがアルコール漬けの日々を送っていた。特にアブサンは、片時も手放さない程だったようだ。緑の妖精に誘われるまま自分の絵画が世に出るのを見届けることなくその人生を閉じてしまった。

ポール・ヴェルレーヌ

偉大な詩人ヴェルレーヌ。彼の作風は抗い難い魅力を持ち芸術的だが、彼自身は破滅的な人生を送った。「我が悪霊」と呼んだ詩人ランボーとともにアブサンに溺れ、ヴェルレーヌ自身が「誤った道」と呼ぶ方へ自ら踏み込んでいくことになる。緑の詩神と彼が魅了された悪霊に導かれて。

この他にもモネやピカソ、ゴーギャンなどもアブサンをこよなく愛していた。また、日本では太宰治の小説『人間失格』の中でアブサンについての描写があるが、本人が愛飲していたかどうかはわかっていない。

蘇った緑の妖精

一時は禁止されたアブサンだが、1981年、WHOによってツヨンの残存許容量含有量の上限が決められ、それ以下のものなら製造を許可されるようになり各地で製造が再び行われるようになった。2005年にはアブサン発祥の地スイスでも解禁、再び美しい緑の魔性の酒が世界各国で楽しめるようになった。

現在ではシンプルにそのままで飲んだり、カクテルにして飲む場合も多いというが、アブサンにはその魅力にふさわしい美しい飲み方がある。

フレンチ(クラシック)スタイル

ポンタルリエグラスというグラスの下部に液溜まりの空間があり、その上にグラス部分が乗っているアブサン専用のものを使用する。液溜まりの部分のみにアブサンを入れ、グラスの上にこれも専用のアブサンスプーンを渡し、スプーンの上に角砂糖を乗せる。角砂糖の上にファウンテンなどの特殊な形状のアブサン専用の水差しを用い水滴を垂らす。一滴ずつ水滴が落ちるたびゆっくり角砂糖が溶けて白濁した水割りとなっていく様子は美しい。

19世紀にフランスなどで大流行していた当時はこの飲み方が主流であった。

チェコ(ボヘミアン)スタイル

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こちらはあらかじめグラスにはアブサンを入れず(氷は好みで入れても良い)、角砂糖を乗せたアブサンスプーンをグラスに渡す。角砂糖にかかるようにしてアブサンを注ぎ、角砂糖に着火する。アルコール分が燃えて白っぽい火が立つ様子が退廃的な雰囲気を醸し出す。角砂糖が泡立つかほぼ溶けたらグラスに落としてかき混ぜる。もしくはスプーン上の燃えている角砂糖にミネラルウォーターを垂らし消火する。この場合はそのミネラルウォーターの量によって水割りになる。

チェコスタイルはフレンチスタイルに比べて歴史は浅く、20世紀後半に生まれたと言われている。現在本格的なバーなどで提供される際は見栄えの良さからかこのチェコスタイルが多いようだ。

現代風にシンプルにロックにするも良し、道具を揃えて様式美を堪能しながら芸術家たちに想いを馳せるのも良し。
現代に蘇った緑の妖精を心ゆくまで堪能してみてはいかがだろうか。

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紫水晶
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