HOLISTIC STYLE BOOK 富裕層向けメディアサイト

若きチェリスト達の挑戦〜2CELLOS 圧巻のライヴ

チェロ2挺でマイケル・ジャクソンの曲を演奏して世間を驚かせた2CELLOS。2017年3月、4thアルバム『スコア』の伴うワールドツアーを英国からスタート。 彼らの魅力を今回の来日公演のライヴパフォーマンスも含めて紹介する。

新世代のデュオ、2CELLOS

スロベニア出身のルカ・スーリッチとクロアチア出身のステファン・ハウザーの2人のチェリストによるデュオである。

ルカは5歳の頃からチェリストの父より教えられてチェロを始める。2009年には名門である英国王立音楽院に入学、エルトン・ジョン・スカラシップを受ける。同年、音楽界の権威あるコンクールの1つであるルトスワフスキ国際コンクールにおいて優勝。若くしてアムステルダムのコンセルトヘボウ、ウィーンのムジークフェライン、ロンドンのウィグモアホールなど、クラシック音楽を志すものなら憧れてやまない名だたる殿堂ホールでの演奏経験を持つ。

ステファンは20世紀を代表する偉大なチェリスト、ロストロポーヴィチの最後の弟子の一人であり、その演奏能力は高く評価され、過去のコンクールでの優勝回数は21回を数える。また2CELLOS結成以前には英国のバッキンガム宮殿などでチャールズ皇太子の前で演奏を披露したことや祖国の国民的人気歌手オリヴァー・ドラゴエヴィチとのコラボレーション・アルバムをリリースするなど2人揃って新進気鋭の実力派チェリストだ。

インターネット時代の申し子

もともとロックミュージックやポップスなども幅広く聴くという2人は2011年、マイケル・ジャクソンの代表曲『Smooth Criminal』をチェロ2挺で演奏。その映像をYouTubeにアップした。その視聴回数は驚異的なものだった。なんとたった2週間で約300万回。この数は本人たちも予想していなかっただろう。

それがきっかけで注目されることになり、CDデビュー前の2011年6月からはじまるエルトン・ジョンのツアーに参加。
7月にUS盤ファーストアルバム『2CELLOS』を発表。直後にはiTunes Festivalにてパフォーマンスを披露。日本盤は9月に発売された。

YouTubeから発掘されて話題になり、デビューという現在のネット社会の時代の申し子のような彼らはそれからもアルバムを次々と発表、快進撃を続けている。

日本では2013年、NTTドコモのテレビCM『ドコモのツートップ(2CELLOS篇)』に出演。その端正なルックスと演奏スタイルから注目を集めた。

4thアルバム『スコア』

そして2017年に4枚目のアルバム『スコア』を発表。今作はゴッドファーザーやシンドラーのリスト、タイタニックのテーマなど映画音楽を2CELLOSならではの2挺のチェロで表現したものとなっている。レコーディングにはストラディヴァリウスとアマティを使用。制作されてから300年以上は経つという歴史的にも貴重な銘器のサウンドをじっくり味わうことができる何とも贅沢なアルバムだ。
このアルバムに伴うワールドツアーが3月からスタート。日本にも来日した。今回は追加公演の5月11日、大阪フェスティバルホールのライヴレポートをお届けする。

迫力のライヴパフォーマンス

公演前に携帯電話やスマホによる写真撮影、動画撮影OKとアナウンスされると女性ファンの叫び声で会場がどよめいた。ルカとステファンが登場したのかと勘違いした程だ。客電が落ちたらどよめきは倍に。いよいよ2人が登場、割れんばかりの拍手と大歓声だ。

スクリーンミュージックで魅せる

今回は弦楽オーケストラとドラムをバックに、まずは新作アルバム『スコア』からスクリーンミュージックのセットだ。炎のランナーやムーンリバー、ゴッドファーザーやタイタニックのテーマなどが次々と披露される。ルカが片言の日本語を交えながらMCを挟む。ユーモラスなコメントに観客を笑わせるが、演奏となればさすがの1言しか出てこない。2人ともクラシック畑の出身とあってオーケストラとの間合いのとり方やハーモニーは完璧だ。ルカが指揮者の代わりに曲の出などに合図を送るが、それすらも計算されたかのように絵になっている。

特筆すべきはブレイブハートのテーマだ。映画音楽の巨匠、ジェームズ・ホーナー作曲の名曲であるが、ルカとステファンの世界感に完全に一致していた。目を閉じ自分の中を見つめて弾くルカ、観客と目を合わせながらルカのサウンドに呼応するステファン。2人のチェロのサウンドは深く大きく、まるでフルオーケストラを率いているかと思わせるような迫力だ。座席に押さえつけられているかのように身動きすら叶わない。2CELLOSの世界が会場を完全に支配した。

2CELLOSの原点、ロックナンバー

そしていよいよ彼らの原点、スムース・クリミナル。ロックパートへの突入だ。観客は大盛り上がり、やはりこれなくして2CELLOSは語れないといったところか。ニルヴァーナのスメルズ・ライク・ティーン・スピリットが披露されると会場は総立ち。興奮のるつぼと言ってもいいかもしれない。少しディストーションがかかったような歪んだチェロのサウンドが何とも心地良い。観客の熱狂ぶりからも感じたが、ロックはやはり何かが胸を熱くさせる。それはあの特徴的なギターサウンドでなく、演奏者のスピリット次第だということがルカとステファンによって証明された。

連発されるロックナンバー、ステファンはおなじみの立って片足で飛び跳ねながら演奏したり、寝転んで回転しながら演奏したりと激しいアクションで髪が乱れるほどだ。オーケストラの女性や観客にマイクを向けたり、赤く光る角のついたカチューシャをして観客を笑わせるがどんな姿勢で演奏しても乱れないのはさすがだ。ルカはそれを見て笑いながら演奏する。この2人についてよく静と動、光と影という表現がされているが動き回らないルカが静なのでは決してない。ルカからはほとばしるような熱さが感じられる。情熱が渦巻いているのをこれでもかとルカの出す音は教えてくれる。外に向けてアクションとして表現するタイプかそうでないかの違いだろう。

初披露『イマジン』

印象的だったのはアンコールのラストでジョン・レノンのイマジンが演奏されたことだ。ステファンいわくまだどこでも演奏したことがないとのこと。本公演で初披露だったからではなく、この曲を今彼らが演奏することの意味を考えると涙が出そうだ。
彼らの出身、クロアチアでの90年代の独立戦争を幼いうちに体験したのであろうと思うが、今現在のシリア情勢、各国で起こり続けるテロ、そのことに思いを馳せてこの曲を演奏したのではないだろうか。こうして音楽を楽しめる環境にいる私達にも今戦争などで苦しんでいる人が多くいることを共有して他人事ではなく考えて欲しいとのメッセージかもしれない。
特に超絶技巧を披露するタイプの曲ではなく、彼らのアルバムにある定番人気曲でもないこの曲を最後の最後に持ってきた2人の選択は彼らの年齢に不似合いなほどの思慮深さを感じさせた。

彼らの音色の思い起こしながら帰路につく人たちは皆笑顔にあふれていた。
彼らの世界を堪能した濃密な1時間半。まだ若い才能豊かな彼らが次はどんなアプローチを見せてくれるのか、早くも楽しみで仕方がない。

INTRODUCTION of THE WRITER

紫水晶
name. 紫水晶

RELATED

チェロ2挺でマイケル・ジャクソンの曲を演奏して世間を驚かせた2CELLOS。2017年3月、4thアルバム『スコア』の伴うワールドツアーを英国からスタート。 彼らの魅力を今回の来日公演のライヴパフォーマンスも含めて紹介する。