60年代、美術業界に大きな衝撃が走る。アンディ・ウォーホルという作家の手がけた「マリリンモンロー」という作品だ。その字の如く微笑んだマリリンモンローの肖像画がシルクスクリーンによって表現されたアート作品。これを芸術と見るか否や大きな物議を醸しだした名画。そして確実にアンディ・ウォーホルの名前を知らしめ、確固たる地位を得るきっかけとなった作品。アメリカを代表する女優であり、セックスシンボルでもマリリンモンロー。ウォーホルは何故マリリンモンローを自身の作品として選んだのか?現在ウォーホルの最も有名な作品であり、代表作となったマリリンモンロー。近代美術界の未来さえ見据えていたように思えるウォーホルのヴィジョンとは?
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アンディ・ウォーホルは何故マリリンモンローを作品にしようとしたのか?
名画「マリリンモンロー」が生まれた背景とは?
現代では、アンディの作品が先か彼女の映画が先かと言われる程、アンディ・ウォーホルの代表作品となった「マリリンモンロー」。冗談のような話ですがアンディ・ウォーホルの作品を通じてマリリンモンローを知ったという若い世代は少なくない。もっと驚くべきはアンディ・ウォーホールの名前さえ知らずにアート作品のみを通してマリリンモンローと言う女優を知る人も少なくはないとう事実。この状況にはウォーホルも天国でにやりと微笑んでいるだろう。それとも古臭かった当時の美術界に中指を立てているだろうか?どちらにしても凄い事で、これこそウォーホルの目指したステレオタイプともとれる新しい芸術の在り方だったようにも感じます。60年代。近代アートが盛んだったニューヨーク。近代アートもファッショナブルなstyleと同様にみなされていた時代。しかしウォーホルの作品は極めて異端。何枚も同じモノをキャンバスに刷ることの出来るスクリーン印刷という手法を用いた、当時は芸術とはみなされないアート。大量生産、大量消費を豊かさの象徴と捉えていたアメリカに対する皮肉にも感じられる無機質なウォーホルの作品。
1枚の作品を仕上げるのに膨大な時間を費やす事さえ芸術とみなされていた絵画の頂点でもある油絵に対する挑戦にもとれるシルクスクリーン作品。賛否を問う事になるウォーホルの作品はポップアートとして現在も高い評価を得ている。そして崇高な絵画以上に目に触れる機会も多い。複製画やポスターも様々な場所に置かれ、気軽に購入する事さえできる。「ウォーホルを知らなくても作品は知っている」という作家冥利に尽きる現象が起こるわけです。
ウォーホルがマリリンモンローの作品の製作を始めたのが1962年以降。マリリンモンローの死がきっかけだと言われています。映画「ナイアガラ」のスチール写真からマリリンモンローの肖像画を切り出しシルクスクリーン作品を作り出します。当時のウォーホルは34歳。翌年に製作、発表した「キャンベルのスープ缶」にてポップアートという近代芸術を確立したばかりのウォーホルは飛ぶ鳥を落とす勢い。美術界の評価は決して高いモノではありませんでしたが、ウォーホルには自分の作品や表現方法に美術史を変えることの出来る可能性と、力がある事は分かっていたようにも思います。もしかするとウォーホルは自分に対する評価など関係なく作りたいモノを作っていただけなのかもしれません。
美術界から、いい意味でも悪い意味でも注目を集めていたウォーホルの作品「マリリンモンロー」はキャンベルのスープ缶以上に衝撃を与え物議を醸しだします。トップ女優の突然の死。そして自殺とも暗殺ともささやかれるスキャンダラスな死因。そして芸術作品にハリウッド女優の写真を使うという大胆かつエキセントリックな作品。謎の死を遂げたトップ女優を題材にした異端児ウォーホルの作品は、ウォーホルの存在を今まで知らなかった人にまで知れわたる事となります。
マリリンモンローはトップ女優の死を利用した二流作品と酷評
当時売名行為とも言われた名画「マリリンモンロー」
ウォーホルはマリリンモンローの肖像画を様々な色で刷り大量生産をします。これぞウォーホルのアートワークであり、ウォーホル芸術の真骨頂であるシルクスクリーン作品です。「キャンベルのスープ缶」で見せた大量消費、大量生産を象徴する作品。同じモノが何枚も存在するアート作品。1点モノが良しとされる芸術の世界に反発するかのように見えるウォーホルの作品に苦虫を噛み潰したような表情の当時の美術界。ウォーホルを排除しようとする働きもあったように思います。「マリリンモンロー」はトップ女優の死を利用した不謹慎な作品とも評され売名行為とも言われました。様々な憶測が飛び交うウォーホルの作品。美術界へのアンチテーゼや売名行為と言った意味合いで作られた作品なのでしょうか?
「マリリンモンロー」はウォーホルが好きなモノを作品にしただけ
ウォーホルはマリリンモンローの大ファン
キャンベルのスープ缶の衝撃で美術界ではアウトローなイメージのウォーホル。彼の作品自体何かのメッセージが隠されているのではないかと勘ぐってしまい勝ち。特にマリリンモンローの死因には暗殺説まで浮上していました。ウォーホルは何かの意図があってこの作品を発表したはずだと思われても仕方ありません。ウォーホルはハリウッド映画の大ファンでハリウッドスターが好きだったと言われています。ウォーホルがマリリンモンローと言う作品を制作する経緯として、彼女の死にショックを受けたからとも言われています。大好きだった女優の突然死に心を痛めたウォーホルが彼なりの手法で作品を発表。つまりはウォーホルなりのレクイエムのような作品だったともとらえられます。
きっかけはマリリンモンローの死から始まった作品
しかしマリリンモンローを通してアメリカを見ていた
今となっては製作の意図ははっきりと分かっていませんが、マリリンモンローに対する畏敬の念が込められた作品として見ると見方も随分変わってきます。この後ウォーホルはハリウッドスターや著名人を題材としたシルクスクリーン作品を数多く制作していきます。ウォーホルが作品として製作した人物は彼と関わりの人物や好きだった人物が中心。しかし彼独特の判断基準により何故この人物を題材に?思う事もありマリリンモンローの作品制作にあたっても単純にファンだっただけではないように思います。
大ファンだった女優の死、そのショックから製作に入ったマリリンモンローと言う作品。きっかけはおそらく単純にモンローの死を嘆き悲しみ、それが原動力、しかし、マリリンモンローと言うトップスターでありアメリカを代表するハリウッド女優にアメリカを重ねた事はな違いありません。大衆文化であり大衆芸術。それがアメリカンポップアート。ウォーホルがマリリンモンローに重ねたのは最早、人物ではなく「マリリンモンロー」という作品だったのかもしれません。ウォーホルはマリリンモンローを生涯かなりの数スクリーン印刷しています。色を替える事によってさまざまな表情にも見えるモンローの肖像。ウォーホルにとってはマリリンモンローも彼の作品のように大量消費を象徴するアイコンだったのかもしれません。

- name. hansu719
- ショップバイヤー、スタイリストを経てフリーライター兼シンガーソングライターが生業です。ハイブランドからストリートstyleまでラグジュアリーな香りのするstyleが好みです。