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本物思考の人に見て欲しい、有田焼と九谷焼の神髄

日本では歴史の古い伝統工芸を継承する職人が減り、近年では斬新なデザインを上手く取り入れて表現の方法を変化させ、10代から30代の若い人にも手が届きやすい価格に設定し、あらゆる工芸品が身近な存在になってきました。陶磁器の世界も自由な作風の陶工がクリエイティブな発想で人々を魅了しています。しかし、日本古来の伝統的な本物が持つ美しさとは、口では簡単に言い表せないほど凝った描写であり、気品に優れた佇まいで心にそっと触れてくれるのです。今回は重厚で奥ゆかしく、そして意外な一面を持つ風雅な有田焼と九谷焼についてご紹介します。

陶磁器と私たちの距離感

茶碗、皿、カップ、湯呑み。これらは食卓において欠かせない存在であり、形やサイズ等、使用する物は新しく買い替えても私たちは生まれた時から陶磁器と共に在り続けています。木製の食器だけで過ごし続けた人は、恐らく少数派ではないでしょうか。
歴史を遡りながら熟練の職人が生み出した作品を見れば、陶磁器の魅力に詳しくない人でも素敵な部分がたくさん伝わってくる筈です。

有田焼

佐賀県の有田町をメインに広がった有田焼は、日本の皇室に献上した実績があり、その際は呼び名が「禁裏様式」とされています。藩窯で焼いた高級な物は「鍋島様式」と呼ばれ、色合いは献上するに相応しく艶やかで、一般向けより遥かに美しい物です。
様式名は現在も継承されていますが、初期の段階では、有田焼の名が定まるのは随分先となり、それまでのあいだ名称が幾つも登場します。初期伊万里もそのうちの1つです。
何故、有田焼ではないのか?理由は実に簡単でした。江戸時代は伊万里の港から送り出したことが由来で、どの地区で焼かれたか関係なく陶磁器の名称は一括りに「伊万里」となっていたのです。若しくは「肥前焼き」でした。
当時はそんなにも、名称に強いこだわりを持つ意味を考えなかったのかもしれませんね。

アリタの名前は海外に広まり、文化的価値を持つようになった

明治時代に入ると、有田で焼かれた物は西洋の文化が抽入されたことを表すが如く、形も雰囲気も変化してきました。これはドイツ人で化学者のゴットフリード・ワグネルが西洋流の工業生産方法を日本人に教えたからです。
その甲斐あって、1867年に開催されたパリの万国博覧会では高評価を得て世界に認められ、これを機に日本初の貿易商社「起立工商会社」が設立されました。

その後、戦争に巻き込まれつつも陶芸作家を生み出し、伝統技術は守られました。戦後には窯跡が国から評価を受けて国の史跡に指定され、上有田地区は重要伝統的建造物群保存地区になっています。1977年には、経済産業大臣指定伝統工芸品に指定される等、功績は輝かしいものばかりです。

有田焼、ライターが推奨する花が主役の作品

有田焼のコーヒーカップ

日本の象徴・桜が描かれたコーヒーカップと碗皿のセットです。レトロにモダンな雰囲気を重ねました。内側には青い波が美しく描かれ、取っ手が枝のように途中で曲がっています。
碗皿だけに視線を留めれば、コーヒーが入った(地面があるとも表現出来る)皿に桜が浮かんでいるようで、皿1枚にも風情を見出せる作品と言えるでしょう。

皇室に献上している窯元のボンボニエール

窯元・辻家十四代目、辻常陸の作品。ヨーロッパと付き合いだした明治時代、ボンボニエールは砂糖菓子を入れておくための陶磁器でした。側面は華美な模様で彩られています。蓋を開けると中は真っ白で、蓮の葉と花が1つずつ描かれているだけのシンプルなデザインです。

辻常陸 (十四代)
十四代 辻常陸(じゅうよんだい つじひたち、1909年(明治42年) - 2007年(平成19年)3月15日)は、佐賀県有田の陶芸家。
白磁発祥の地である佐賀県有田で、350年続く歴史的な窯元『辻家』に生まれる。本名、辻常喜。
辻家は仙台藩主伊達綱宗に端を発し、百十二代霊元天皇に至るまで、辻家が生み出すその鮮麗たる磁器を認め、以後『常陸大掾(天皇直属の家臣)』の官位を賜り『禁裏御用窯元(皇族のみのための窯元)』として現在も尚、皇室へ数々の磁器を献上している。また国内外の万博にも出品していた。

柿右衛門様式の仁窯も人気がある

日本人にもファンが多いヨーロッパのマイセンに刺激を与えた柿右衛門様式を用いているのが仁窯の小畑裕司。心を和ませる柔らかな色で描き、時に鮮やかな色も挿し、強弱を付けた筆跡が特徴です。昔ながらの伝統的な絵柄もあれば、上記のように華やかな色彩で魅せる陶器のワイングラスもあります。
彼の作品「夫婦湯呑」は天皇両陛下に献上され、一般の人も購入可能です。その際は桐箱に箱書きをしてくれるので、お世話になった夫婦、両親の結婚記念日、恋人たちへの贈答品にぜひどうぞ。

九谷焼き

日本海側に位置する、観光名所として高い知名度を誇る能登半島や金沢がある石川県の、現在は加賀市と呼ばれている九谷村で九谷焼は生まれました。1655年頃とあってこちらも歴史は古いのですが、100年も経たないうちに窯を使用しなくなったのです。経緯は現在も不明のまま…。その間に焼かれた陶磁器は「古九谷」と呼ばれています。
江戸時代を迎えると愛知県の瀬戸物が磁器産業の波を迎え、1807年になって加賀藩が京都で評判の陶工・青木木米を呼び寄せました。現在の金沢市山の上町に春日山窯を作ったことを機に加賀地方では窯がたくさん設置され、この窯で焼いた陶器は「再興九谷」と呼ばれることになったのです。
九谷焼はウィーンで開催した万国博覧会に出品。明治時代には、上絵付けして金箔を焼き付けた彩色金襴手が注目され、世界にクタニの名前が知れ渡りました。
尚、現代では2001年に、女性的で透明感のある優美な作品を得意とする吉田美統が重要無形文化財保持者に選ばれています。

九谷焼は国際交流の場にも使用されている

時代は流れ、九谷焼は宮内庁御用達の贈答品だけでなく、ダイアナ妃が存命だった頃、日本の皇室からチャールズ皇太子に結婚祝いの献上物として壺を贈られています。窯元の1つ・上出長右衛門窯は平成12年に沖縄サミットで首脳晩餐会にて使用されたことがありました。毎回ではなくとも、大事な時に九谷焼が使用されているのが窺えます。

上出長右衛門窯(上出惠悟)
【陶歴】
1879年 石川県寺井市に九谷焼問屋として創業
1897年 窯元として器の製造を開始する
1969年 明治神宮御依頼による「花瓶」を献納の栄を賜る
1983年 昭和天皇御来県の折、御使用の御器制作の栄を賜る
1984年 全国伝統工芸展にて通産省局長賞を受賞
1991年 日本煎茶工芸協会理事に推挙される
2000年 沖縄サミットの折、晩餐会の器に用いられる
2003年 96年の藍綬褒章に続き、勲五等雙光旭日章を受く
2007年 スポーツブランドPUMAの企画において自転車を九谷焼にて制作する

九谷焼、ライターがおすすめする和洋が融合した1つの作品と風雅な2つの作品

上出長右衛門窯×ハイメ・アジョン

上記で触れた九谷焼の窯元・上出長右衛門窯は2010年に、未来的な要素を盛り込んで機能性も兼ね備えたデザインが特徴の家具等を手掛けるスペイン人のデザイナー、ハイメ・アジョンとのコラボを発表しました。ファニーな姿や作風は奇才である証拠です。

【アーティストプロフィール】
■ハイメ・アジョン(JAIME HAYON)
1974年、スペイン・マドリード生まれ。アーティスト/デザイナー。イタリア、スペイン、イギリスでアートを学んだ。Times誌で現代を代表するクリエイター100人の中に選ばれた他、Wallpaper誌でもこの10年で最も影響力のあるアーティストの1人に選ばれている。

こちらがハイメ・アジョンがデザインしたうちの1つ、醤油挿しです。完成した作品は斬新でクリエイティブ、しかし日本の味わいを崩さない青による線の集合が特徴。愛らしく、テーブルの上を飾ってくれます。

古風なUSBメモリ

蓋をしていると、ライターか何かの小箱と見間違えてしまいそうなこれは、金属部品以外、九谷焼で作ったUSBメモリです。人目を引く伝統的な模様と色合い。日常的にパソコンを扱う頻度が多い海外の人にも喜んで貰えそうな1品です。また、日本人の心を小物に変えて持ち歩くことが出来ます。

美しさと強さを兼ね備えたカブトムシ

最高価格・税別19万円の値段が付いた九谷焼のカブトムシは節足の細さで大きな体を支え、遠巻きに見ればさながら本物の珍種と間違ってしまいそうな出来です。120体以上が売れて現在は在庫がありません。
クワガタも生産されました。カブトムシ5種類、クワガタ5種類、全部色柄と形が違い、制作者の強いこだわりを感じます。

如何でしたか?美しい物を見ることは日常の疲れを癒してくれます。実際に佐賀県、石川県に行ってじっくり堪能する時間が取れれば、予約制の体験コーナーで自分だけの作品を焼いてみるのも良いでしょう。
今回の記事で、日本の伝統的な芸術に込められた奥ゆかしさが伝わったなら幸いです。

INTRODUCTION of THE WRITER

rensui510
name. rensui510
ドビュッシー『月の光』が好きです。ピカソに習い、小鳥の鳴き声やカエル1匹にも自然の美を見出すことを心掛けています。

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