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映画やゲームで見るアレ「ニトロ」とは何か

マフラーから噴出する激しい炎、爆発的な加速。カーアクション映画の演出や、レースゲームの必殺技的な感じで使用されている「ニトロ」。 あれは空想の産物などではなく、実際に存在するチューニングパーツです。 今回はニトロ(ナイトラス・オキサイド・システム)についてご紹介します。

ガソリンエンジンは混合気で動く

噛み砕いて説明しますと、ガソリンエンジンはガソリンと空気が混ざった「混合気」をスパークプラグで火花点火させて燃焼し、動力を得ます。
エンジンはガソリンだけでは動きません、空気も必要なのです。厳密に言えば酸素が必要です。

この「酸素」こそが、ナイトラス・オキサイド・システムを紹介するうえでのキーワードになります。

パワーアップの基本は酸素と燃料

エンジンパワーアップの基本はいかに多くの酸素をエンジンに送り込み、それに見合った量の燃料を噴射するかです。
ターボチャージャーやスーパーチャージャーといった過給機は機械的に空気の密度、すなわち酸素の密度を高めた空気を吸い込ませパワーを上げています。

では元から酸素密度の高い気体を用意してそれをエンジンに送り込んだらどうだろうか?
そこで登場するのがナイトラス・オキサイド・システムです。

ナイトラス・オキサイド・システム

ナイトラス・オキサイド・システム(Nitrous Oxide Systems)はナイトラス・オキサイド(亜酸化窒素)という気体をエンジン内部に噴射するシステムです。本来は戦時中、戦闘機の高高度飛行を可能にする為の装置でした。
なお、「ナイトラス・オキサイド・システム」という名称はアメリカのホーリー・パフォーマンス・プロダクツ社の登録商標であり、一般的にナイトラス・オキサイド・システム、またはNOSとはこのメーカーの物を指します。それ以外のメーカーの物、またはこの手のチューニングパーツ全体を「ナイトロ・システム」と呼んでいます。

この亜酸化窒素は笑気ガスとも呼ばれ、全身麻酔など医療用途で用いられています。
空気中に含まれる酸素が約20%なのに対し、亜酸化窒素は約35%の酸素を含んでいる。このことから酸素吸入量が増え、大きなパワーを得ることが出来るのです。

「ニトロ」という呼称もある為、爆薬の一種であるニトログリセリンと勘違いされることがあります。しかし亜酸化窒素は爆発性の無い安定した物質です。同じ窒素化合物ではありますが化学的特性はまったく異なります。

主な噴射方式

ドライショット

亜酸化窒素のみををインテーク内に噴射する方式です、構造は単純ですが燃料の噴射量を調整する(燃調セッティング)必要があります。

ウェットショット

亜酸化窒素と燃料をあらかじめ混合してからインテーク内に噴射する方式です。あらかじめ気体と燃料が混合されているため基本的には燃調セッティングは必要ありません。

ダイレクトショット

ウェットショットでの噴射を各シリンダーの吸気ポートごとに行います。
200馬力以上の大幅なパワーアップが可能ですが、非常にシビアな燃調セッティングが要求されます。
適切な燃調セッティングがとれていない場合、エンジンがブローする可能性が高いです。

純酸素では駄目なのか?

ナイトロ・システムは空気よりも酸素を多く含んだ亜酸化窒素を使用しエンジンパワーを上げています。
ならば純度100%の酸素を同様に使用すれば良いのでは?と思う方もいると思いますが、純酸素をエンジン内部に送り込んでしまうと凄まじい燃焼温度になりピストン等が焼け落ちてしまうのです。
建築現場などでガスバーナーで鋼材を切断している光景を見たことはないでしょうか?あの鋼材の切断面と同じことがエンジン内部でも発生してしまうのです。

人も長時間、純酸素の環境にいると身体に異常をきたし最悪死に至ることもあるそうです。
人の身体とエンジンは不思議と似ているように筆者は思います。

絶対に真似をしないでください

※動画再生にあたっては音量にご注意ください。

上記動画のように吸入口めがけて亜酸化窒素を直接噴射する行為は決して真似をしないでください。
燃調セッティングを行っていない車両でのドライショット方式のナイトロ・システム運用も同様の結果を招く危険性があります。

これはどういう事かと言うと、突然大量の酸素が吸入されたことにより空燃比(酸素と燃料のバランスのこと)が燃料は少なく酸素だけが極端に多い状態になってしまい、燃焼温度が上がりエンジンがブローしてしまったのだと思います。

興味本位であっても亜酸化窒素を直接吸入口めがけて噴射してはいけません。ましてや純酸素を噴射すると爆発の危険すらあります。絶対にやめましょう。

エンジンは絶妙なバランスの下で成り立っている

過給機やナイトロ・システムに共通して言えることは酸素と燃料のバランス、空燃比が重要になるということです。
極端な吸排気系のチューニングなどは空燃比を狂わせ、かえって性能が低下したりエンジン寿命が短くなってしまうことがあります。
建物は土台がしっかりしていなければ傾いてしまいます。それと同様にエンジンも基本となるセッティングがしっかり出来ていなければ傾いてしまうのです。

INTRODUCTION of THE WRITER

守屋空山
name. 守屋空山

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