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日本発、新機序のインフルエンザ治療薬、早ければ2018年度に発売へ

抗生物質などの感染症治療薬や、高脂血症の治療薬で強みをもつ塩野義製薬。半世紀以上続くフジテレビ系の音楽番組「ミュージック・フェア」は、放送開始以降今日まで、同社の一社提供番組であることもよく知られています。2017年7月24日の同社の発表は、内外に驚きを持って迎えられました。

驚くべき発表内容

塩野義製薬が今回発表した内容は、開発中のインフルエンザ治療薬「S-033188」についてです。現在この薬はフェーズ3の臨床試験の段階、いわゆる「治験」を実施中ですが、そこでの結果は注目に値すべきものでした。

今回の臨床における主な目的は、インフルエンザに罹っている期間の、プラセボ(偽薬)に対しての優越性の確認でした。また、現在主流となっているインフルエンザ薬「オセルタミビル」(商品名:タミフル)とも優越性の比較が行われました。

結果は、プラセボに対しては罹病期間で明確な優越性を示したことが確認されました。これだけで主目的は達せられたことになります。また、ウイルスの感染力に関しても、いくつかのデータでプラセボやオセルタミビルに比較して優越性が確認できたといいます。

オセルタミビルは副作用発現が問題とされていますが、この新薬においては、副作用の発現率はプラセボと同程度であり、オセルタミビルとの比較では、明らかに低い発現率にとどまった、という結果も得られています。

株式市場もこれを好材料と判断、翌25日は前日終値と比較して220円高で取引が始まりました。それもそのはずで、治験にて優越性が認められたことは、厚生労働省による薬の承認へ、一歩近づいたことを意味するからです。2018年度中の発売を目指すとしています。

インフルエンザは、人類共通の脅威

インフルエンザの感染爆発(パンデミック)については、以前からWHOでそのリスクが指摘されています。歴史を見てみると、全世界で1億人ともいわれる犠牲者を出した「スペイン風邪」は、まさにインフルエンザ・パンデミックそのものでした。

また、2009年に発生した新型インフルエンザの大流行は、記憶に新しいところでしょう。こちらは弱毒性と言われてはいますが、それでも全世界での死亡者数は2000人を超えています。

なぜこのようなことが起きるのか。インフルエンザウイルスにはたくさんの種類がありますが、人間から人間への感染能力を獲得していないものも数多くあります。それが、何らかのきっかけで人間から人間へと感染する能力を獲得すると、人間の間で爆発的に広がることとなります。過去に感染した経験がないため、免疫が獲得できていないからです。

スペイン風邪も、鳥インフルエンザが豚を経由して人間への感染能力を獲得した結果、世界的な流行を起こしたという推定がなされています。メディアにも時々登場する「H5N1鳥インフルエンザ」は高病原性とされています。現時点では喫緊の問題ではないように思えますが、あらかじめ知っておくべき情報ではあるといえるでしょう。

オセルタミビルをめぐる動き

現在、日本におけるインフルエンザ治療薬の主役はオセルタミビルですが、気になるニュースがあります。WHOでは疾患ごとにモデル医薬品のリストを出しているのですが、オセルタミビルのインフルエンザ治療薬としての位置づけが、格下げになったのです。具体的には、「保健システムに最低限必要な薬」から「補足的な薬」への変更です。

オセルタミビルの効果が全部否定されたわけではありませんが、想定されたほどの効果がなかったと判断されたのでしょう。なお、ザナミビル(商品名:リレンザ)など、オセルタミビルと同様の作用機序の薬が何種類かありますので、このWHOの決定が致命的な意味を持つわけではないことに、留意ください。

ともあれ、対インフルエンザという観点では、新しい薬の登場が待たれている。そこはご理解いただけるのではないでしょうか。

「薬」をめぐる、新たなイノベーションへの期待

この「S-033188」は、インフルエンザウイルスが細胞内で増えるのを防ぐ働きをします。オセルタミビルやザナミビルは、増殖したインフルエンザウイルスが細胞から離れて行くことを阻害する働きの薬ですので、これまでとまったく違った作用の薬になります。

実は2014年には、富山大学と富山化学工業が開発した「ファビピラビル」という、細胞内でウイルスが増殖することを阻害する働きを持つ薬が承認されています。この薬は副作用が指摘されおり、よほどのことがない限り世にでることはない、いわゆる最終兵器的な存在ですが、ウイルスの増殖そのものを抑制することから、インフルエンザのみならず、他のウイルス性疾患への効果も期待できるといいます。

分野は違うものの、2017年5月には筑波大学の研究グループで開発中の薬「YNT-185」に、ナルコレプシーという難病に見られるカタプレキシーという症状を抑制する効果があることが確認、発表されました。

日本発、ワールドワイドへ。まだまだ、新しいイノベーションは出てきそうです。現在進行中のものも含め、研究の今後には大いに期待し、注目していきたいところです。

脚注

アイキャッチ画像出典:Pixabay

(https://www.pixabay.com/)

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