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オペラ「ドン・ジョバンニ」にみる三者三様の女の生きざま

モーツアルトの人気オペラ「ドン・ジョバンニ」といえば2000人以上の女性を陥落させたプレイボーイが主人公。有名なアリアがいっぱいのヒットパレードの典型のような魅力的な作品ですが、登場する女性三人の生き方も三者三様でなかなか興味深いものがあるのです。今回は「ドン・ジョバンニ」に描かれた女性のキャラクターを掘り下げてご紹介いたします。

オペラ「ドン・ジョバンニ」とは?

「ドン・ジョバンニ」は、モーツァルトがイタリアの台本作家ロレンツォ・ダ・ポンテと組んだ「ダ・ポンテ三部作」の一つです。史上最強のプレイボーイ、ドン・ジョバンニの華麗なる恋の遍歴と衝撃的な最期を描くという疾走感溢れるストーリーが数々の美しいアリアで飾られた珠玉の名作です。

「旦那に泣かされたのはあんただけじゃないよ。イタリアでは640人、ドイツでは231人、しかしここスペインでは何と1003人だ」

劇中でドン・ジョバンニの従者が歌う有名な「カタログの歌」。もちろん女性のカタログなんですよ!ゲス不倫だとか騒いでいる現代日本の感覚では、もはや笑ってしまう程の奇想天外級のゲス野郎。それが「ドン・ジョバンニ」なのです。

あらすじ

ドン・ジョバンニはドンナ・アンナを誘惑し、彼女の父である騎士長を殺害。彼女は恋人ドン・オッターヴィオ、ジョバンニに捨てられたドンナ・エルヴィーラと共に復讐を誓う。一方のジョバンニは、マゼットと結婚するツェルリーナを誘惑して失敗。懲りない彼は、今度はエルヴィーラの小間使いを誘惑。しかし、騎士長の亡霊がジョバンニを地獄に陥れる。

ドン・ジョバンニに泣かされた三人の女性たち

①ドンナ・アンナ

オペラ「ドン・ジョバンニ」は序曲が終わり幕を開けると、いきなりレイプシーンから始まります。その被害者が第一の女性「ドンナ・アンナ」です。さらに彼女の悲鳴を聞きつけて駆け付けた父親を目の前でドン・ジョバンニに殺されてしまうという、とんでもない展開です。

当然のことながらドン・ジョバンニの事を恨み、沸々と復讐の炎を胸に宿します。上の動画はドンナ・アンナが婚約者のドン・オッターヴィオに対して切々と復讐して欲しいと訴えているアリアなんです。愛する女性の恨みを晴らすべく立ち上がった婚約者と二人でドン・ジョバンニを追いまわすようになります。

しかしこのドンナ・アンナは三人の中で一番謎めいた存在です。何故なら復讐を遂げた後の彼女が迷走するのです。ドン・ジョバンニが地獄へ落ちて復讐が遂げられ、さあそれでは結婚をとオッターヴィオが勇んでも、「気持ちが落ち着くまであと1年待って」などと言い出します。

ドンナ・アンナの歌うアリアはいつもどこか本音が見えづらく、一見支離滅裂なようにも思えます。しかし、これは筆者の想像ですが、人間誰しも、自分でも自分の気持ちがわからないこと、本音と建前が日々交差することがあるものです。もしかしたら、復讐の炎の裏でドン・ジョバンニに心奪われたような心情が見え隠れしているのでは・・・そんな印象さえ感じさせます。

女心と秋の空なんてことわざもありますが、一筋縄ではいかない人間の、そして女性の神秘的な一面を象徴する女性象と言えるでしょう。

②ドンナ・エルヴィーラ

ドン・ジョバンニと結婚したものの3日間で捨てられて、スペインの北の端から南の端まで彼を追いかけてきたのが第二の女性「ドンナ・エルヴィーラ」です。最初にご紹介したドン・ジョバンニの従者レポレッロが主人の「女性のカタログ」といったゲスな行いをばらす相手も、このドンナ・エルヴィーラなんです。ドン・ジョヴァンニの正体を知り、復讐を誓いながらも彼を諦めきれず、ちょっと優しい言葉などかけられると心を許してしまう。そんな女性です。

動画は皆の前で笑いものにされてしまっても、彼のために神さまのお慈悲を乞う、有名なアリア「あの恩知らずは私を裏切り」です。恋する女性の情熱と、裏切られた絶望がごちゃ混ぜになった胸に迫る美しいアリアです。

筆者の個人的な感想では、数あるオペラの名曲の中でもこのアリアが一番好きなんです。悩める女性の気持ちを上品で美しい芸術に昇華させたモーツアルトの力量に舌を巻きつつ、いつも涙がこぼれてしまいます。

③ツェルリーナ

第三の女性は、村娘の「ツェルリーナ」。素朴な農民のマゼットとの結婚式当日、通りがかったドン・ジョバンニに見初められてしまいます。この場面でドン・ジョバンニがツェルリーナを口説くのが有名な二重唱「手に手を取って」です。上に貼り付けた動画がその二重唱なのですが3分ほどのこの二重唱で巧妙な男の口説きテクニックと最初拒んでいた女性が次第に迷い、最後陥落するに至るまでの過程と瞬間を描いた、きわめてエロティックな音楽です。

実際にはこの後ドンナ・エルヴィーラの邪魔が入り、情事には至りません。その後もジョバンニに口説かれますが、一線は越えないという設定なんです。 その後の彼女は婚約者の元に戻ってなんとも小悪魔的な行動を見せつけます。彼女が歌うアリアを2曲は、どちらも婚約者のマゼットをなだめる歌なんです。

「ぶってよ、マゼット」というアリアでは、ドン・ジョバンニとの間を疑ってすねてしまったマゼットを口説き落とそうとしますが、これがなかなか手ごわいのです。「髪を引き抜いても、目をくりぬいてもいいわ」、「それでも、あなたの手にキスするわ」・・・にじり寄るようなチェロの伴奏に乗り、ひたすら下手に出るツェルリーナ。そしてマゼットが機嫌を直したと見るや、しなだれかかります。「機嫌を直して、いとしい人」「夜も昼も、楽しく過ごしましょう」・・・ツェルリーナの分が上がりにつれテンポアップするというおまけまでつきます。ここでも女の手練手管を瑞々しいまでの音楽で表現するモーツアルトの匠の技が冴えわたっています。

まとめ

いかがでしたか?数々の美しいアリアが詰まった名作「ドン・ジョバンニ」の中で描かれているのは、
いつの時代にも共通する女性ならではの苦しみや、悩み、そして愛。とても饒舌に表現されていると思いませんか?

もし「ドン・ジョバンニ」を鑑賞する機会がございましたら、参考にしていただけると幸いです。

INTRODUCTION of THE WRITER

takuan1
name. takuan1
40代の主婦です。
好奇心を刺激するような記事をたくさん更新していきたいと思っています。

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