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エドワード・スノーデン氏が失わなかったもの〜告発の裏側

2013年のエドワード・スノーデン氏の告発は私たちに衝撃を与えた。数十にも及ぶ容疑でアメリカ政府に指名手配されている彼は現在、ロシアに滞在している。 衝撃のニュースとともにスノーデン氏についても様々に報道され、高校中退の元CIA局員という一風変わった経歴や年収20万ドルというようなことばかりが取り沙汰された。 ここではスノーデン氏が何故人一倍安定した職場や収入、社会的地位や、これまでにとどまらずもしかしたらこれからの人生をも投げ打つことになるような重大な決断をしたのか考察する。

エドワード・スノーデン氏の経歴

アメリカ、ノース・カロライナ州エリザベスシティで1983年に誕生。父親は元沿岸警備隊、母親は連邦裁判所職員という両親ともに公職についている家庭で育てられた。姉は弁護士をしているという。
ボルチモアの高校を中途退学したあとはGDE(中等教育修了証、日本で言う高等学校卒業程度認定試験にあたる)を取得、2003年にメリーランド州アン・アルンデル・コミュニティ単科大学に進学、コンピュータ学を専攻する。その頃にMCSE(ソリューション・エキスパート、マイクロソフト社認定の高いITスキル保持者)の資格を取得した。2011年頃にはリヴァプール大学に籍をおいていた。
2004年にはアメリカ合衆国軍に志願入隊、その優れたIT技術を評価され特技兵として配属。自由の為、国際テロリストと戦う為に入隊したというエドワード・スノーデン氏はイラク派兵にも志願するなど意欲的な新兵であったが訓練中に両足を骨折、除隊を余儀なくされる。
失業中の2005年、NSA(国家安全保障局)にスカウトされメリーランド大学言語研究センターの警備任務の仕事につく。
2006年、CIA(中央情報局)からの接触があり、コンピューターセキュリティ技術者の職を得る。2009年にこの職を辞すと、NSAと契約関係にあったDELLに就職。日本の横田基地でも勤務していたという。2011年DELLから出向という形でCIAに主任技術者として戻る。
2013年、DELLと同じくNSAと契約関係にあるブーズ・アレン・ハミルトン社に転職。
そして2013年6月の世界を揺るがす告発に至るのである。

告発に至る経緯

最初にまずスノーデン氏がコンタクトを取ったのはアメリカのガーディアンに籍を置くジャーナリスト、グレン・グリーンウォールド氏であった。これが2012年12月のことである。
スノーデン氏は文書をそのまま送ったのでは盗聴される可能性が大きいため、PGP(暗号ソフト)のインストールを条件に情報提供すると申し出たが、グリーンウォールド氏は一度見送る。
業を煮やしたスノーデン氏はドキュメンタリー作家ローラ・ポイトラス氏に接触。ポイトラス氏はグリーンウォールド氏にコンタクトを取り、グリーンウォールド氏はあらためてPGPのインストールやその他の求められたセキュリティの条件を満たした上でスノーデン氏とやり取りを始めた。
スノーデン氏は2013年5月20日、香港へ移動。
香港のホテルでグリーンウォールド氏らによるガーディアンのインタビューを受け、NSAによる盗聴の実態『PRISM』ついて告発した。
この数日にわたるインタビューの様子をポイトラス氏がカメラに収めたものが第87回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞受賞した映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』である。
この暴露の第一報は2013年6月、ガーディアンから報道された。

スノーデン氏の告発

2013年6月に世界を震撼させたスノーデン氏の行為は日本においても大きく報道されたのでご存知の方も多いと思う。軽く要点をまとめると、スノーデン氏の告発は国家によってアメリカ国内で1ヶ月で約30億件、全世界において約970億件のインターネットや電話回線の盗聴されていたことを明らかにした。通話内容はもちろんのこと、通話者の氏名、住所電話番号やIPアドレス、クレジットカード番号や位置情報まで収集されていた。またこの盗聴には、GoogleやYahoo!、YouTube、マイクロソフト、アップルなどの企業が協力していたことも暴露した。また世界中でハッキングを行っていること、同盟国に対しても盗聴を行っていたことも明かされた。

スノーデン氏という人物

映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』の中でも見ることができる淡々とインタビューを受けるスノーデン氏。熱っぽく語ることもなければ動揺を見せることも無い。言葉によどみは一切なく、インタビュアーの質問には明確な答えがすぐさま返される。相当の切れ者であることはそのやり取りですぐ察することができる。
ただ、彼の静謐さを感じさせる佇まいには驚かされた。
世界を揺るがすようなことをする青年には見えない。その物腰は柔らかく、とても穏やかだ。しかし全く揺るがない。目を逸らすことなく自分の主張を静かに述べる。威圧的では決してないのに圧倒される。

グリーンウォールド氏に家族や恋人について触れられた時も、全くうろたえずに答える。今までのような絆は持てないだろうと。

スノーデン氏にそこまで覚悟させ、大それた行動に駆り立てるものは一体何だったのだろう。インタビュー当時29歳の普通の若者だったスノーデン氏。リベルタンだという彼がCIAやNSAで目の当たりにしたものは許せないことであっただろう。それは容易に想像がつく。しかし普通の20代ではなかなか稼ぐことのできない年収20万ドルという報酬や社会の裏事情、しがらみなどに流されたり慣れてしまって若いときには誰しもが持っていた理想や信念、正義感を失ってしまったり忘れてしまったり、圧し殺してしまうのが普通だ。そうして大人になっていくと言ってもいいだろう。

しかしスノーデン氏はそうではなかった。
国家ぐるみで行われている異常なことに、慣れることはなかった。感じた違和感を放置することもなかった。おかしいことをおかしいと感じられる感覚をその組織の一員でありながら持ち続けていたのだ。

理想主義者の暴走、そういう見方もあるだろう。
確かにスノーデン氏は理想主義者だろうとは思う。しかし一体どれだけの社会人がその理想を持ち続けられるか。社会に出たら今まで信じていたことの裏側を嫌というほど思い知らされてそれに慣れていく。理想は遥か遠く、彼方へ追いやられる。そして忘れられる。確かに誰もがかつては持っていたはずなのに。

スノーデン氏は純粋だった。子供のように正しいものを正しいと、間違っていることを間違っていると感じる心を失わなかった。

スノーデン氏は気づいてしまった。
人の自由が踏みにじられている、しかも国民の知らないうちに。愛国心のあるムスリムが集中的に監視されていたり、ジャーナリストが国家の脅威リスト入りしているのだ。スノーデン氏についてのこの記事を見ている読者も、危険人物入りしている可能性も否めない。思いついたことや興味を持ったことをGoogle検索したらそのキーワード次第では集中監視されることになる。
知的好奇心を持つことは命取りになりかねない。言論や思想、表現の自由は実質的には存在しないことになるのだ。

信念のままに行動できる人間が、現代社会で一体何人いるだろう。
それには多くの犠牲を伴うからだ。
しかしスノーデン氏は実行した。
彼は人並外れた行動力と信念、覚悟を持ってこの告発に至ったのだ。

高度な知性と子供のように純粋な正義感と理想とを持ち続けたまま。

告発の行方は

スノーデン氏は英雄か反逆者か、とよく問われているのを見かける。
スノーデン氏は言う。英雄でも反逆者でもなく一人の人間でアメリカ人だと。
そんなスノーデン氏がその人生をかけて投げかけたこの事実を私達はどう受け止めてどう行動するか。
どれだけの議論が交わされてどう変わっていくか、もしくは何も変わっていかないか。
スノーデン氏にはどこにいてもそれを見届けてほしいと思う。

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紫水晶
name. 紫水晶

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