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「枯山水って何?」意外と知らない 枯山水のコンセプト&魅力あふれる日本庭園特集

1200年以上の昔から膨大な量の芸術品を生み出してきた京都はまさに街自体が大きな美術館だといっても過言ではないでしょう。 盆地という地形特有の蒸し暑い夏、底冷えの厳しい冬。鮮やかな四季の移ろいの中で培われてきた伝統と美意識を重んじながらもモダンな要素を取り入れたりと、さり気なく所々に散りばめられた卓越したセンスは向き合う人を魅了してやみません。美術館の莫大な蒐集品の中から今回取り上げるのは庭園です。さあ、フラットな気持ちで向き合ってみましょう。

枯山水のコンセプチュアリズム

枯山水とは

コンセプチュアル・アートといえば1960〜70年代にかけて世界的に行われた前衛芸術運動(日本語でいうと観念芸術)であり、その特質とは、物質的な側面よりも観念性や思考性を重視したものですが、日本の枯山水においては、かなり古い時期からこの特質が体現されていました。

池や遣水などの水を使わずに海や山などの風景を表現する。石と砂、苔、ただそれだけで作り出す庭に抽象的な意味を込める。白砂には水を、石組や苔には山や島の風景を表現させるのです。

ある意味権力の象徴でもあった豪華な回遊式庭園などとは相対的な性質をもった、精神世界や作り手の心象風景を重視した庭園=それが枯山水である、といえましょう。

「見えないものを見る」

後ほど室町時代の画聖・雪舟が手がけたとされる芬陀院庭園をご紹介いたしますが、枯山水には水墨山水の理想の境地が投影されています。それに付随して作り手の精神世界を絡み合わせ、限られた空間の中に小さな宇宙を表現しているのです。

フラットな気持ちで想像力を膨らませよう

抽象表現、精神世界、見えないものを見る…などというと堅苦しく難解なイメージが先行しがちですが、率直なところ、無理に意味を見出す必要はないでしょう。美とは極めて主観的なものですし、向き合う人がフラットな気持ちになって自由に想像力を膨らませ、何らかのニュアンスを感じとれば良いのかもしれません。

心静かに向き合いたい枯山水

1.龍安寺方丈庭園

横25m、奥行き10m(75坪)の空間に白砂を敷き詰め、15個の石を配した有名な枯山水。お寺自体は室町時代の創建ですが、方丈庭園の作者については伝承の域を出ません。

小島が大海に浮かぶ様子、または中国の説話にまつわる「虎の子渡し」を表現しているという諸説がありますが、詳細は不明のままです。

自由に想像を巡らせてみれば、見る人によって見方が微妙に違ってくる枯山水だといえましょう。

2.大徳寺龍源院庭園

龍源院は500年程前の永正年間に創建された大徳寺の塔頭(禅宗寺院に付属する小寺院)です。方丈を中心として南北に庭、東に壺庭がそれぞれ最小の要素で構成されています。

東にある壺庭・東滴壺(とうてきこ)は日本最小の枯山水である壺庭。一枚の板石で雨の滴を、白砂の流れでその波紋の静かな広がりを、簡潔な美意識の中に表現しています。

必要不可欠なアイテムのみが醸し出す、いわば「引き算の美」。500年前の日本に存在したミニマルデザインであるともいえるのではないでしょうか。

3.東福寺芬陀院庭園

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室町時代の水墨画の聖・雪舟の作による枯山水。

一見、静寂な風景ですが、動的な表現が感じとれる庭園です。石組は禅の世界の長寿のモチーフである鶴亀をイメージしているとされ、動き出しそうな亀を止めるべくその甲羅に石を穿つといったウィットに富んだ演出がなされているといわれています。

雪舟作の伝承は確かでしょうが、作者の思惑を完全に知ることはできません。空想に思いを馳せながら、イマジネーションを膨らませて静かに向き合ってみましょう。

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4.東福寺方丈庭園

伝統の美意識を守りつつ、モダンをミックスした例。方丈を中心として東西南北に枯山水が配置されています。

作庭は昭和14年、本人いわく「永遠のモダン」を追求した造園家・重森三玲の手によるこれらの枯山水は、庭に抽象表現を取り入れた重森三玲自身の代表作ともいわれています。

東庭

「足元に宇宙を見る」北斗七星が円柱、白川砂、苔、背後の二重生垣のみによって表現されています。

西庭

日本に古くから伝来している市松模様をサツキの刈り込みと葛石によって表現しています。

南庭

中国伝来の蓬莱神仙思想を背景とした日本庭園における定型的な表現だとされます。白砂の幾何学模様の波の中に6mほどの長石を寝かせ、神の宿る4つの島を巨石で表し、見る人に威風堂々とした印象を与えます。

北庭

西庭の大市松を受け継ぐ形で整然と並んだ少市松模様が徐々に小さくなり、やがて東北方向の谷へ向かって消えていくという表現がなされています。

重森自身、学生時代に日本画を勉強していますが、ここでは「ボカシ」という方法を用いており、境目をぼかすことによって次第に消えていく様子を表しているとされます。

小さな宇宙に共存する抽象と具象の美

枯山水とは単に鑑賞するだけでなく、自由に想像を膨らませて思惟することで各々の心に何かを与えてくれる芸術といえるでしょう。先人の美意識に敬意を表し、心静かに向き合ってみませんか。

INTRODUCTION of THE WRITER

高城みれい
name. 高城みれい
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